「Webデザイナーを目指しているけれど、検定の種類が多すぎてどれを受ければいいのかわからない」という声はとても多く聞かれます。国家検定から民間のスキル認定試験まで、名前の似た試験がいくつも並んでいるため、公式サイトを見比べているうちに時間だけが過ぎてしまうという方も少なくありません。
Webデザイナー向けの検定は、大きく「国家検定」「制作スキルの認定試験」「デザイン理論の検定」の3種類に整理できます。この分類さえ頭に入れておけば、自分に必要な試験は驚くほど絞り込みやすくなります。
この記事では、Webデザイナーが受験できる主要な検定の種類を一つずつ整理し、それぞれの内容・受験料・向いている人を解説します。受験料は記事執筆時点で各実施団体が公表している金額をもとにしていますが、年度によって改定されることがあるため、申し込み前には必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。

Webデザイナーの検定は大きく3種類に分けられる
数多くの検定が存在しますが、出題される内容の性質で分けると次の3種類に整理できます。この分類は、自分がどこを補強したいのかを考えるうえでの地図になります。
1. 国家検定(技能を国が認定するもの)
Webデザインの分野で国家検定にあたるのが「ウェブデザイン技能検定」です。職業能力開発促進法にもとづく技能検定として実施されており、合格すると「ウェブデザイン技能士」という国家資格の名称を名乗れます。学科と実技の両方に合格する必要がある点が、民間試験との大きな違いです。
2. 制作スキルの認定試験(ツール・コーディング系)
HTMLやCSSのコーディング能力、PhotoshopやIllustratorといったツールの操作能力を測る試験群です。実技中心のものが多く、「実際に手を動かして作れるか」を証明したい方に向いています。Webクリエイター能力認定試験、Photoshopクリエイター能力認定試験、アドビ認定プロフェッショナル、HTML5プロフェッショナル認定試験などがこの種類に含まれます。
3. デザイン理論・知識の検定
配色やレイアウト、情報設計、Webサイトの企画といった「考え方」を問う検定です。CG-ARTSのWebデザイナー検定や色彩検定が代表例で、マークシート形式で受験できるものが中心です。手を動かすスキルとは別軸の、土台となる知識を体系的に整理できます。
3つの種類のうち、どれか1つを取れば十分というものではありません。「理論の検定で土台を作り、スキル認定試験で操作を証明する」といった組み合わせ方をすると、学習の抜けが少なくなります。
Webデザイナー向けの検定の種類と内容を個別に解説
ウェブデザイン技能検定(1級・2級・3級)
厚生労働省が定める技能検定制度のひとつで、特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会が実施しています。3級・2級・1級の3階級があり、いずれも学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。
受験料は次のとおりです(税込・記事執筆時点)。学科と実技をそれぞれ申し込む形式のため、両方受ける場合は合計額が必要になります。
| 階級 | 学科 | 実技 |
|---|---|---|
| 3級 | 6,000円 | 9,000円 |
| 2級 | 7,000円 | 17,500円 |
| 1級 | 8,000円 | 27,000円(ペーパー実技を含む) |
3級の実技試験には減額の仕組みがあります。試験実施年度の4月1日時点で23歳未満の方は、雇用保険に加入している在職者であれば4,500円、在職者以外(学生・個人事業主・公務員などを含む)であれば6,800円となります。
3級は実務経験がなくても受験でき、Webデザインの学習を始めたばかりの方でも挑戦しやすい階級です。一方で2級以上は実務経験などの受験資格が定められているため、申し込み前に自分が条件を満たしているかを確認する必要があります。試験は年に複数回実施されており、申請期間が短く設定されている点にも注意してください。詳しい制度はウェブデザイン技能検定の公式サイトで公開されています。
学科対策には、出題範囲に沿って解説された市販のテキストも用意されています。気になる方はチェックしてみてください。
Webクリエイター能力認定試験(スタンダード・エキスパート)
株式会社サーティファイが実施している民間の認定試験で、Web標準に沿ったコーディング能力を測ります。スタンダードとエキスパートの2つの区分があり、受験料はスタンダードが6,400円、エキスパートが8,000円(いずれも税込・記事執筆時点)です。金額は改定されることがあるため、申し込み前に公式サイトで確認してください。
試験はリモートWebテスト形式で実施されており、試験時間はスタンダードが60分、エキスパートが110分です。合格基準はスタンダードが実技問題の得点率65%以上、エキスパートは知識問題と実技問題の合計得点率65%以上とされています。

Webデザイナー検定(ベーシック・エキスパート)
公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS)が実施する文部科学省後援の検定です。名前がそのまま「Webデザイナー検定」なので混同されがちですが、ウェブデザイン技能検定とはまったく別の試験です。
受験料は個人受験の場合、ベーシックが6,050円、エキスパートが7,150円(税込・記事執筆時点)です。マークシート形式で大問10問程度が出題され、コンセプトメイキングや情報設計、ビジュアルデザイン、テスト・運用といったWeb制作の流れ全体が問われます。手を動かす試験ではないため、実技に自信がない段階でも受験しやすい種類の検定だと言えます。試験範囲はCG-ARTSの公式ページで公開されています。
色彩検定(3級・2級・1級・UC級)
色彩検定協会が実施する配色の検定で、Webデザイナーにも受験者が多い試験です。検定料は3級7,000円、2級10,000円、1級15,000円、UC級6,000円(いずれも税込・記事執筆時点)となっています。
UC級は色覚の多様性に配慮した配色を扱う区分で、アクセシビリティが重視されるWeb制作の現場と相性が良い内容です。配色の根拠を言葉で説明できるようになるため、クライアントへの提案時に理由を語れるようになるという実務的なメリットがあります。
Photoshopクリエイター能力認定試験・Illustratorクリエイター能力認定試験
こちらもサーティファイが実施する試験で、グラフィックツールの操作能力と、指示にしたがって制作物を仕上げる力を測ります。受験料はスタンダードが8,100円、エキスパートが9,100円(税込・記事執筆時点)です。
試験時間はスタンダードが130分、エキスパートが140分と長めで、知識問題と実技問題の2部構成になっています。Illustratorクリエイター能力認定試験も同じ枠組みで実施されています。
アドビ認定プロフェッショナル
アドビ社が公式に認定する国際資格で、日本国内ではオデッセイコミュニケーションズが試験を運営しています。PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどアプリケーションごとに独立した科目として認定されるため、1科目ごとに受験料が必要になります。記事執筆時点の受験料は一般価格12,980円、学割価格9,680円(税込)です。
HTML5プロフェッショナル認定試験
特定非営利活動法人エルピーアイジャパンが実施する認定試験で、レベル1とレベル2の2段階があります。受験料はどちらのレベルも16,500円(税込・記事執筆時点)です。レベル2の認定を受けるにはレベル1の取得が前提条件となっています。マークアップやAPIまわりまで踏み込む内容のため、Webデザイナーの中でもフロントエンド寄りの業務を担当したい方に向いた種類の試験です。
種類が多い検定をどう選ぶ?目的別の絞り込み方
すべての検定を受けようとすると、受験料も学習時間も膨らみます。目的から逆算して1〜2種類に絞るのが現実的です。
| 目的 | 向いている検定の種類 |
|---|---|
| 公的な裏付けのある肩書きがほしい | ウェブデザイン技能検定 |
| コーディングができることを示したい | Webクリエイター能力認定試験/HTML5プロフェッショナル認定試験 |
| 制作の流れを体系的に学びたい | Webデザイナー検定(CG-ARTS) |
| 配色の判断に自信を持ちたい | 色彩検定 |
| ツール操作を証明したい | Photoshopクリエイター能力認定試験/アドビ認定プロフェッショナル |
未経験からWebデザイナーを目指す段階であれば、まずはウェブデザイン技能検定3級か色彩検定3級のように、受験資格が問われず費用も抑えられる階級から始めるのが取り組みやすい進め方です。
検定に合格したことだけで採用が決まるわけではありません。Webデザイナーの選考ではポートフォリオの内容が重視される傾向があるため、検定は「学習の指標」「知識の証明」として位置づけ、制作物づくりと並行して進めるのが現実的です。
検定の学習で用意しておきたいもの
独学で検定に挑む場合、教材選びでつまずく方が多く見られます。試験の種類ごとに公式教材が用意されているものが多いため、まずはそこから押さえるのが遠回りになりません。
- 各検定の公式テキスト・公式問題集:色彩検定は協会発行の公式テキストから出題されるため必須です。ウェブデザイン技能検定も公式サイトで過去問題が公開されています
- 一問一答形式の問題集:通勤時間などのすき間時間に知識を回すのに向いています
- 色見本帳(カラーチャート):色彩検定の学習では、画面上の色ではなく紙の色票で覚える場面があります
- A4サイズのファイルボックス:公式テキストと問題集、過去問のプリントをまとめて立てておくと、学習の再開が早くなります
- ブルーライトカット機能付きのPCメガネ:実技対策で画面に向かう時間が伸びる時期の負担軽減に使われています
働きながら学習する場合、机に向かえる時間が1日1時間確保できないという悩みは珍しくありません。テキストを開くまでの手間を減らしておくことが、学習を続けられるかどうかを分ける現実的な工夫になります。


検定を受けるときに気をつけたいこと
申請期間が短い試験がある
ウェブデザイン技能検定のように、申請期間が2週間程度しか設けられていない試験もあります。試験日だけを覚えていて申し込みを逃すというのは、実際によくある失敗です。受験を決めたら、試験日と申請期間の両方をカレンダーに登録しておきましょう。
試験制度は変わることがある
受験料の改定、出題範囲の更新、対象バージョンの切り替えなどは定期的に行われます。アドビ認定プロフェッショナルのようにアプリケーションのバージョンごとに試験が切り替わるものもあるため、教材を買う前に対象バージョンを確認してください。
実技のある試験は環境の確認を
実技試験では使用できるソフトやエディタが指定されている場合があります。普段使っている環境とは違うツールで受験することになるケースもあるため、事前に操作へ慣れておくと当日の焦りを減らせます。
実技対策で画面に向かう時間が長くなる時期は、ブルーライトカットのPCメガネを取り入れる方もいます。
よくある質問
Q. Webデザイナーになるのに検定は必須ですか?
必須ではありません。Webデザイナーは資格がなくても就業できる職種で、実際に無資格で活躍している方も多くいます。ただし、未経験から転職を目指す場合は学習に取り組んできた事実を客観的に示す材料として機能するため、ポートフォリオと組み合わせて活用する価値があります。
Q. 検定の種類が多くて選べません。1つだけ選ぶなら?
目的によりますが、Web制作の全体像をまだつかみきれていない段階であれば、CG-ARTSのWebデザイナー検定ベーシック、または色彩検定3級から入る方が多く見られます。どちらもマークシート形式で、実技環境を用意しなくても受験できるためです。
Q. 独学でも合格できますか?
公式テキストや過去問題が公開されている検定が多く、独学で臨む方は珍しくありません。ただし実技を伴う階級では、制作物を客観的に見てもらえる環境があるかどうかで進み方が変わります。周囲に相談できる相手がいない場合は、スクールの単科講座を部分的に使うという選択肢もあります。
Q. 複数の検定を同時に受けても大丈夫ですか?
試験日が近い検定を複数申し込むと、どちらも中途半端になりやすい傾向があります。受験料も積み上がるため、まずは1つに絞って合格し、次の種類に進むほうが結果的に効率的です。
Q. 何級から受ければいいですか?
受験資格の制限がない検定であれば、いきなり中位の級を受ける方もいます。ただし下位の級の範囲が上位の級にも含まれる構成が一般的なため、基礎に不安があるなら下の級から積み上げるほうが着実です。
まとめ
Webデザイナーが受験できる検定は種類が多く見えますが、「国家検定」「制作スキルの認定試験」「デザイン理論の検定」の3系統に整理すれば、自分に必要なものは絞り込めます。ウェブデザイン技能検定は国家検定として公的な裏付けがあり、Webクリエイター能力認定試験やアドビ認定プロフェッショナルはツールとコーディングの実力を示すのに向いています。CG-ARTSのWebデザイナー検定や色彩検定は、制作の考え方や配色の土台を固める種類の試験です。
受験料や試験制度は改定されることがあるため、申し込み前には必ず各実施団体の公式サイトで最新の情報を確認してください。検定はあくまで学習の道しるべであり、Webデザイナーとしての評価はポートフォリオと制作物の質で決まります。検定学習で得た知識を、そのまま自分の作品づくりに落とし込んでいきましょう。



